彼と彼女の、最大の不具合



そして席に腰を下ろそうとした瞬間、右京くんはさりげなく椅子を少し引いてくれて、その気遣いに思わず心の中で声が漏れる。


「(……優しい!好きっ!)」


そんなことを思っているなんてもちろん口には出せないけれど、彼のこういう何気ない行動の一つ一つが、どうしてこんなにも心を掴んで離さないのか分からない。

もう、なんでこんなに気遣いができるの?かっこいい!


ビールを受け取って、自然な流れでグラスを持ち上げる。冷えたビールのグラスが指先に心地よく感じられた。

隣に座る右京くんと、ふと目が合う。その瞬間、いつ見ても綺麗な顔だな、なんて思いながらも、そんな感情を隠すように、何事もない顔でグラスをそっと近づけた。


「おつかれ」

「おつかれさま」


そのまま軽くグラスを合わせると、乾いた小さな音がして、店のざわめきに溶けていった。

勢いよくビールを喉に流し込むと、冷たさと炭酸が一気に体の中を通り抜けていって、仕事の疲れが少しだけ遠くに流れていくような気がする。

見ると右京くんも同じようにいい飲みっぷりで、喉を鳴らして飲んでいる。その姿が妙に絵になるから、こういう時だけでもやっぱりずるいと思ってしまう。


ちなみに、お酒に強い私と右京くんは滅多なことでは酔わない。
だからドラマみたいに、ふらふらになった右京くんを介抱して、そのままお持ち帰り……なんていう展開は現実には起こり得ない。

それはできないのだ。考えたことはないけれど。……本当に、考えたことはないけれど!


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