彼と彼女の、最大の不具合
仕事中は髪をポニーテールにまとめているから、そのたびに露わになるうなじにどれだけ無自覚に人を煽っているのか分かっているのかと問い詰めたくなるし、白衣だってサイズが合っていないのか少し大きめで、いつも襟を折り曲げているその仕草すら妙に愛らしく映ってしまう。
だからこそ言ってやりたい、香坂が可愛いのは当たり前だ。
だがな、それを気安く共有していいわけじゃない。香坂は俺のものだ。いや彼氏ってわけじゃないけど。
少なくともお前らが軽々しく視界に入れていい存在じゃねぇんだよ。
心の中で毒づきながら、未だにこそこそと香坂の話をしている後ろの卓の男たちを思いきり睨みつけると、視線に気づいたのか慌てたように顔を逸らしていく。
その反応にほんの少しだけ気が晴れたところで、当の香坂はどうしているかと思えば、
「だから私はね!あのスキンケアをほんとはもっと…!」
大将相手にやたら熱のこもった口調で仕事の話を語っていて、さっきまでの拗ねた様子はどこへやら、完全に自分の世界に入り込んでいる。
その自由さに呆れ半分、けれどやっぱりどこか目が離せないまま、俺はまた一つため息を飲み込んだ。
大将は困ったようにこちらへ目くばせを送ってきて、そのあからさまな「助けてくれ」という合図に思わず笑いが零れてしまう。
「香坂。話は、俺が聞くよ」