彼と彼女の、最大の不具合
「(え、なに、予定ってなに?誰と?まさか女?右京くん、女!?)」
心臓だけが勝手に最悪の方向へ走り出す。でも表情だけはなんとか平静を保つ。
「そっか。それはしょうがないね」
声は落ち着いている。たぶん、落ち着いているはず。内心はもう完全にパニックで、変な汗まで出てきているのに。
「また今度、俺から誘う」
右京くんはそう言って、ちらっと横目でこっちを見る。
「(こ、今度誘ってくれるの!?)」
さっきまでの不安が、意味を持つ前に別の方向へ押し流されていく。
「じゃあ、右京くんの奢りね」
なんて、全く可愛くない返答をしてしまい、慌てて自分のデスクに戻る。
だって、こんなこと言われるなんて思ってなかったんだもん~っ!
私の知らない女がいるのか?って一瞬思っちゃったけど、もうどうでもいい~っ!
パソコンを前にすると、次の市場展開用の資料、各国規制の最終チェック、マーケへの共有。やることは山ほどある。
最近まであれだけ試作品に追われていたはずなのに。
単純すぎて、自分でも少し呆れるくらいに、右京くんの一言で疲れも簡単に飛んでしまうんだからどうしようもない。