彼と彼女の、最大の不具合
グラスの中で氷が小さく音を立てる。その静けさとは裏腹に、頭の中は全然落ち着いていなくて、むしろさっきからずっと同じことでいっぱいでどうしようもない。
「…可愛すぎて」
「え?なんて?」
香坂が可愛すぎて、と口の中で転がした言葉が思ったよりもそのまま外に漏れてしまった。
「可愛すぎて、限界なんだよこっちは」
開き直るように言えば、霧島が一瞬ぽかんとした顔で固まる。その反応すらどうでもよくなるくらいには頭の中がいっぱいだ。
一緒にしたいと伝えたときに『……でも、右京くんが分割に了承したんでしょ?』とほんの少しだけ唇を尖らせていたあの拗ねたような表情も、
部長にからかわれたときに耳まで真っ赤になって言い返せなくなっていた顔も、
俺が予定を理由に断ったときにほんの一瞬だけ見せたあの間も、
全部きっと本人は必死に隠しているつもりなんだろうけど隠しきれていなくて、むしろ全部そのまま表に出てしまっていて、そういうところがどうしようもなく可愛い。
こんな状態で顔を合わせたら多分まともに話せる自信がなくて、それで今日は断った。
頬杖をついてぼんやりと香坂の顔を思い浮かべていると、視界の端で霧島がわざとらしく肩をすくめて、呆れたようにこっちを見ながら口を開いた。
「それにしても、天音ほんと変わったよな。大学の頃なんて来るもの拒まず去る者追わずだったお前が。今は香坂さんにゾッコンだからな!」
からかうように笑われて、図星すぎて反射的に言い返そうとした言葉が喉の奥で詰まって消える。