恋から逃げるのには理由(わけ)があって
――その夜。

私は洗濯物を畳んでいた。

テレビは消していた。
スマホも伏せていた。
現代技術を封印した私は強い。たぶん強い。少なくとも靴下を左右で合わせる能力は維持している。

白いタオル。
部屋着。
会社用のブラウス。
靴下。

一枚、二枚、三枚。

時計を見る。

十九時五十八分。

見ない。
絶対に見ない。

私はタオルを畳む速度を上げた。
人はなぜ、見てはいけないものの開始時刻を正確に把握してしまうのか。脳みそ、そういうところだけ高性能で困る。
< 128 / 179 >

この作品をシェア

pagetop