恋から逃げるのには理由(わけ)があって
番組は華やかに進んだ。
映画の予告映像が流れ、共演者のコメントが紹介され、太陽は落ち着いた声で撮影の裏話を語った。

乗馬のシーンで馬が急に止まった話。
剣の練習で手に豆ができた話。
海外スタッフとのやり取りで、言葉より先に動きで通じた瞬間があった話。

太陽は仕事の話をしている時、本当にまっすぐな目をする。

私だけに向ける優しさとは違う。
作品に、役に、関わる人たちに向ける誠実さ。

その顔を見ると、思い出してしまう。

一度目の人生で、台本を読み込む横顔。
夜中にリビングの床でストレッチをしながら、セリフを小さく反復していた声。
疲れているのに、「この役をちゃんと生きたい」と言っていた真剣な目。

私はあの人の仕事を好きだった。
太陽が誰かのために全力で光ろうとする姿を、誇らしく思っていた。

だからこそ、怖かった。

その光の近くに私が立つと、また誰かの悪意が寄ってくる。
また、あの夜の路地へ行き着く。

私と恋をしなければ、太陽は生きていける。

そう思って逃げたのに。

画面の中の太陽は、私がいなくてもちゃんと光っていた。
それが嬉しくて、苦しかった。
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