恋から逃げるのには理由(わけ)があって
窓の外には、夜の街が広がっている。
遠くに車のライト。
ビルの窓。
誰かの日常の灯り。

一度目の私は、太陽を失った。
二度目の私は、太陽から逃げようとした。

けれど今、私は太陽の隣にいる。

逃げる理由は確かにあった。
でも、逃げるのをやめる理由も、ここにある。

太陽が私の髪にそっと触れた。
頭を撫でる手は、あたたかくて、やさしかった。

「向日葵」

「何?」

「明日の朝、何食べたい?」

私は少し考えた。

「卵雑炊」

「作る」

「しょうが多めで」

「わかった」

「あと、プリンも」

「朝から?」

「幸せなので」

太陽は笑った。

「じゃあ、苦めのカラメルのやつを出してあげる」

「覚えてるんだ」

「忘れない」

その言葉に、私は目を閉じた。

もう怖くない、とは言わない。
でも、怖くても大丈夫だと思える。

目を開ければ、太陽がいる。
私を見て、笑っている。

王子様みたいで、世界的俳優で、時々過保護で、卵雑炊が得意で、私のことを15年越しどころか人生二周分好きでいてくれる人。

私はその手を握った。

「太陽くん」

「うん」

「生きててくれて、ありがとう」

太陽は一瞬だけ泣きそうな顔をした。

それから、私の手を強く握り返した。

「向日葵も、生きててくれてありがとう」

窓の外で、夜の街が静かに光っていた。

私は太陽の肩に寄りかかりながら、小さく笑った。
< 179 / 179 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

氷の法医学者と、秘密の共犯になりました

総文字数/4,655

ミステリー・サスペンス1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
スターツ出版小説投稿サイト合同企画「第2回1話だけ大賞」編集部おすすめ作品
【改稿版】記憶を失くした御曹司と偽りの妻

総文字数/81,147

恋愛(純愛)113ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
※「マカロン文庫新人コンテスト」マカロン文庫10周年記念奨励賞受賞作品を改稿したものです※

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop