恋から逃げるのには理由(わけ)があって

第7話 生きる希望

《太陽視点》

その動画が公開された夜、俺は駅前のマンションのリビングで、スマホの画面を伏せた。

何度も取材で話してきた。
役作りのこと。
乗馬やフェンシングやダンスや語学。
王子役を演じるために、どんな準備をしたか。

けれど、今日公開されたインタビューだけは、少し違った。

「大切な人に、王子様が好きだと言われた」

言ってから、スタッフに笑われた。
ロマンチックですね、と。
初恋ですか、と。
世界中のファンが喜びますよ、と。

たぶん、そう見えるのだろう。

病室の白い天井も。
消毒液の匂いも。
点滴の管も。
泣きそうなのに笑っていた、あの子の顔も。

画面の向こうの人たちには見えない。

俺はソファにもたれ、目を閉じた。

向日葵は、見ただろうか。

見たら、きっと困った顔をする。

「15年前の冗談を世界配信するな」と怒るかもしれない。

「王子様の履修科目が重すぎる」と真顔で突っ込むかもしれない。

想像すると、少し笑いそうになった。
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