恋から逃げるのには理由(わけ)があって
目を閉じる。
でも、画面に表示された文字が、まぶたの裏に残っている。

Happy Birthday。

生まれてきてくれてありがとう、向日葵。

何度も何度も、胸の奥でその文字が光る。
迷惑だと唱えるたびに、嬉しさがその隙間からこぼれてくる。

私は布団を頭までかぶった。

逃げると決めたのに。
恋から逃げると決めたのに。
たった一通のLINEが、私の夜をこんなに乱してくる。

誕生日になったばかりの部屋で、私は暗闇の中、スマホを伏せた場所を何度も意識しながら、眠れない夜がまだ始まったばかりだと知った。
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