龍と白衣の天使

煌の連れてきた子 by美月



――随分と可愛い子連れてきたなぁ

そう思ったのが、最初だった。

煌の隣にいる女の子。

小さくて、細くて。
この世界とは、どう見ても不釣り合い。

「……へぇ」

思わず、じっと見てしまう。

総長が誰かを“ここ”に連れてくるなんて、珍しい。
しかも――

「俺のもんだ」

あの一言。

……あれは、さすがに聞き間違いじゃないよね。

(なにそれ)

心の中で苦笑する。

昔から知ってるけど、あの人は基本、他人に興味ない。

それなのに。

あんな風に言うなんて。

――ちょっと、面白くない。

「総長、医療の方は――」

誰かが声をかけると、

「任せる」

それだけ言って、あっさり行ってしまう。

……ほんと自由。

残されたのは、その子と、微妙な空気。

「……あの」

小さな声。

びくっとしたみたいに、肩が揺れる。

近くで見ると、やっぱり普通の子だ。

むしろ、それ以上。

目も鼻も口も、お人形よりも可愛い。
こんな世界でなくとも幸せに生きてけそう。

それなのに、どうしてここにいるんだろう。

「総長から預かってる子でしょ?」

声をかけると、

「え、あ……はい」

ちょっと慌てた返事。亜麻色がゆれる。

……うん、かわいい。

素直にそう思った。

「つむぎちゃん、だよね」

「え、なんで……」

目を丸くする反応に、思わず笑う。

「さっきの、全部聞こえてたから」

ほんと、分かりやすい。

隠し事とか、できなさそう。

「私は美月。医療チームの一員」

そう名乗ると、

「……花散里つむぎです」

ぺこっと頭を下げる。

その仕草がまた、妙に丁寧で。

――やっぱり、この世界の子じゃない。

「……ここって、なんなんですか」

少し迷ってから出てきた言葉。

怖いけど、逃げない。

そんな声。

「普通じゃない人たちの集まり、かな」

そう答えながら、つむぎちゃんを見る。

ちゃんと聞こうとしてる。

理解しようとしてる。

思ってたより、強いのかも。

「怖い?」

「……ちょっと」

正直な答え。

……ほんと、分かりやすい。

「でも大丈夫だよ」

気づけば、少しだけ優しく言っていた。

「ルール守れば、ちゃんと守られるから」

「ルール……」

不安そうに繰り返す声。

その顔を見て、思う。

――ああ、この子。

放っておけないタイプだ。

煌が気に入るの、分かる気がする。

……でも。

「それにしても」

少しだけ距離を詰めて、

「すごいね」

「え?」

「総長にあんなこと言わせるなんて」

くすっと笑うと、

「……?」

きょとんとした顔。

……自覚ないんだ。

「“俺のもんだ”って」

その言葉を出した瞬間、

ぴくっと反応する。

分かりやすい。

顔、ちょっと赤いし。

(ああ、もう)

なんか、かわいいな。

でも同時に――

(ずるい)

そんな感情が、ほんの少しだけ浮かぶ。

私、最近全然かまってもらってないのに

……いや、別にいいんだけど。

「ま、よろしくね」

手を軽く振る。

「これから、いろいろ教えるから」

つむぎちゃんは少しだけ安心したように、

「はい」

小さく頷いた。

---

そのときは、まだ思ってなかった。

この子が――

この場所の空気を、少しずつ変えていくなんて。

そして。

煌の隣に立つのが、
当たり前になっていくなんて。


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