遼くんは泣き顔がお好き。


海辺がすっかり見えなくなったところで、水道が見えて来た。
海水浴客のために設置されてるらしく、ちょっとした荷物置きみたいなスペースもある。
遼くんはあたしを降ろすとハンカチをためらいなく水で濡らしていく。

「ほら、顔上げて?」

言う通りに顔を上げると頬にひんやりしたハンカチを当てられた。

あれ、
なんか前にもこんなことなかったっけ?

頭をよぎったのは、頭から砂を被った自分。
それを優しく拭ってくれた温かい手。

そうだ、これはたしか小学生の時のことだ。

クラスメイトに砂をかけられたあたしは、公園で1人で泣きそうになってて。
見知らぬ男の子がハンカチで拭いてくれたんだった。

知らない人から優しくされて、安心したのと情けないのと怖かったのでぐちゃぐちゃになって、大泣きしてしまったんだっけ。


もう顔も覚えてないけど、幼い頃の優しい思い出だ。


「…なんで笑ってんの?」

「え、笑ってた?」

「ニヤって笑ってた。びしょ濡れでニヤニヤ笑ってんの謎すぎ」


そう言いながらカバンからフェイスタオルを出した遼くんは、あたしの頭に被せてガシガシと拭き始めた。






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