遼くんは泣き顔がお好き。
「まあいいや、今日は夏休みなのに久原さんの顔見れて嬉しかったし」
「…あ、うん…」
「顔見ただけで満足」
そう言いながら、本当に満足そうに笑った宮尾くんはあたしの頭を撫でた。
「…やっぱ嘘。顔見れて十分なわけない」
「へ」
「1秒だけギュッてしていい?」
「ぎぎぎぎ…?!何、どう言うこと?!」
「ダメ?」
「いやダメに決まってんじゃん?!誰かに見られたら…っ」
「こんなとこで誰かに見られるとか、漫画みたいな展開ねえから。大丈夫だって」
「いや、そうは言っても…っ」
「嫌だったら殴っていいから、ごめん」
「拒否権なし?!」
オロオロしている間にあっという間に距離を詰めた宮尾くんは、そのまま覆い被さって来た。
思ってたよりもずっとがっしりした腕に抱き込まれて身動きすら取れない。
「ちょ、宮尾く…っ」
「あともう少し」
「もう1秒経った!!!5秒くらい経ってるから!!!」
「……ハァ、分かったよ…」
ため息つきたいのはこっちなんですけど。
一瞬だけすり、と頬をあたしの頭に擦り寄せて、
案外あっけなく離れて行ったその身体はやけに熱かった。
「ほら、今度こそ本当に帰ろ。もう真っ暗だ」
そう言ってあたしの前を歩く宮尾くんの耳は、ほんのり赤く染まっているように見えた。