遼くんは泣き顔がお好き。
ゲホゲホと汚い咳を繰り返しながらどうにか呼吸を整えて、改めて江波さんに言う。
「付き合って、ない。遼くんは友達だってば」
「そうなの?まあこの人目立つし付き合ったりしたら大変そーだよね」
「何それ、目立つのは俺のせいじゃなくねぇ?」
口を尖らせた遼くんが横に座っていたあたしの頭に頬を寄せる。
その瞬間、周りに座っていた若い女の子たちから小さく悲鳴が上がった。
「この距離感おかしくない?彼氏じゃない」
「なぁ、もっと言ってやってくれ江波さん…
もう俺の周りのやつはこれが普通になってて何も思わないやつばかりなんだ…」
「そうだよ遼くん、ちよっと最近調子乗りすぎ!!
あたし君の犬じゃないよ?!」
素早く遼くんから離れて威嚇するけどあたしのそんな反応が効くはずもなく。
言われてみると確かに、最近遼くんの距離感がバグってることに慣れてしまってたかもしれない。
彼氏でもないのにこの距離感は普通じゃないよね?
「犬じゃねーし、れいちゃんは女の子じゃん」
「分かってんならもうちょい距離感どうにかしろって言ってんの…」
疲れたように言った宮尾くんの言葉につんと顔を背けた遼くんは、高貴な猫みたいな澄ました顔でフラペチーノを吸い込んだ。