遼くんは泣き顔がお好き。
一体あたしたち、何してるんだろう。
学校からの帰り道で、
誰が見てるかも分からないのに。
頭ではそう思うのに、すぐに離れないといけないって分かってるのに
身体が言うことをきかない。
指一本も動かすことができないまま、
ただ立ち尽くすことしかできない。
遼くんもあたしの肩に顔を埋めたまま、じっと動かない。
たまにくぐもった声が聞こえるけど何を言ってるかよく聞こえない。
聞き返した方がいいのか迷いながら耳を澄ませてみると、
聞こえて来たのは繰り返しあたしを呼ぶ声。
「………っ!」
勘弁して欲しい。
なんて声で、人の名前呼んでんだこの人。
普段よりももっと甘い、低い声。
その声が鼓膜を揺らした瞬間背筋がぞくりと震えた。
あたしのその反応に喉の奥でくっと笑った遼くんは、
一瞬身体を離してあたしの前に移動する。
大きな両腕が肩に載せられて顔を覗き込まれると、
かぁっと顔が熱くなっていくのが分かった。
「……可愛い顔。」
「ヒッ!!!」
「ぶっ、悲鳴上げないでよ傷つくなぁ」
ケラケラと笑う遼くんの顔はいつもの飄々とした遼くんの顔で、知らず知らずのうちに全身に入っていた力が抜けていく。
さっきまでの張り詰めた空気が嘘みたいに消えていった。