この家、全員まともじゃない。②

『 二つの感情 』

Side:青雲 蓮



「え、何してんの……?」


俺は玄関のドアを開いた瞬間、そう反射的に声が出た。


琴音ちゃんを抱きしめ、キスしようとしている藍。


「……ちっ。」


藍が忌々しく舌打ちした。


藍、いつもの猫撫で声はどうした……?


もしかして、本性……?


俺は目を輝かせ、思わず身を乗り出した。


ウケるわ。こんな俺様だったんだ。


「あ、蓮くん……。」


琴音ちゃんが俺に視線を向けた瞬間、ドキリと胸が高鳴った。


あー、やば。普段主導権を握るのは俺のハズなのに……。


琴音ちゃんに恋したわ。


そんな俺を察したのか、藍は睨みを鋭くした。


「おー、怖。おっつー。」


挑発的に笑う。藍の本性を知って、俺は驚きもしなかった。


どうせこんなんだろうと、予想していたから。


「俺、今度からお前に手加減しないわ。」


フッと笑って大人の余裕ってヤツを見せつける。


そんな俺に一瞥もくれず、いっそ清々しい程スルーした。


若干苛立ちもあったが、それより嬉しさが上回った。


────これから、対等に藍と話せる。


俺は自然と口元が緩んだ。


「……生意気な弟も、たまにはいいかもな。」


そう呟いたが、藍には届かなかったらしい。


二つの感情を持ちながら、俺は人生で一番深みのある笑みを浮かべた。


「……じゃあな、お邪魔しましたー。」


「……さっさと出ていけ。」


「お、言うようになったねぇ。」


軽口を叩きながらも、俺はさっきよりも軽快な足取りで家に戻った。






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