片思いをする彼の瞳に片思いしてしまった私。そう、この恋は実らない。
「どうして私は、あの日、あんな馬鹿げたことを口にしたのかしら……」

 身支度を一人しながら、私は姿鏡に映る自分を見て、大きなため息をついた。
 ここ数日、このため息はもう何度目だろうか。

 後悔しても、ため息をついても何も変わりはしないというのに。
 それでもあふれ出る感情を、抑えることなど出来ずにいた。

「本当、馬鹿げているわね」

 あんなことを願うだなんて。
 分不相応もいいところだわ。

 どう考えたって、勝てるわけもないのに。

 フッと息を吹けば、鏡の中の私はわずかに笑っていた。
 でも、それはほんの少しだけ。

< 1 / 52 >

この作品をシェア

pagetop