片思いをする彼の瞳に片思いしてしまった私。そう、この恋は実らない。
 おそらく両親ですら、この些細な表情の変化など分かりはしないだろう。

 笑わない氷の令嬢。
 そんな風に揶揄されるようになったのは、もう随分と前のこと。

 もっとも、その言葉を広めている人間が誰かも分かっているが、咎めたところで事実なのだからどうしようもない。

 元武人である父、エルランド公爵と病弱な母の元に生まれた私は、幼い頃からほぼ父に育てられてきた。

 私の白銀の髪もアメジストの瞳も父にそっくり。
 だけど父のように笑わないところまで似なくともよかったのだけど。

 公爵家の一人娘として厳格に育てられすぎたせいか、感情を表に出すのが極端に苦手だった。

 それなのに……あの日だけは違った。
 顔を両手で覆いながら目を瞑れば、あの日の醜態がまた頭の中を駆け抜けていく。

 そう、あれは王女殿下から王宮への招待を受けた日だった。

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