堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる
Prologue
10歳の少女は、無秩序な街でひとりきり。
親を失って、頼る者もいない。
「こんなとこで何してんの?」
「……誰?」
もう疲れてしまって、座り込んだ道端。所々に落ちたタバコの吸い殻やビールの空き缶が、ここの危険性を示している。
そんなところに現れた、まだ高校生くらいに見えるその人は、大人の男の人たちを従えていた。
常識的に考えておかしいことに、まだ10歳の少女は気づかない。
そんな違和感よりもずっと大きい恐怖が、彼女の全身を覆っていたから。
カタカタと震える身体を自分自身で抱きしめながら、少女は呟く。
「私を拐っても、なんの意味もないよ?」
「…ははっ」
この状況から早く逃れたい、という思いもあった。
でも、その言葉は少女の心からの本心だったのだ。
だからこそ、急に笑ったその人を疑問に満ちた目で見上げた。
空に輝く月を背に、負けず劣らずの魅力を放つその人は、言葉を落とした。