堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる
「…ほんとに行くの?」
「ここまで来たら行くでしょ」
家に帰ってからゆっくり月の話を聞くはずだったのに、私たちの目の前にあるのは大きいホテル。
もちろん正装で。
なんでこうなっちゃったのか、答えは少し遡る。
"…わかったよ"。そう月が言ってくれて、やっと力になれると思って家に帰ってすぐ。
誰もいないはずの部屋にはレオくんが。───正確には部屋の前だけど。
"パーティーなんですけど、今日らしいです"
なんて爆弾発言を落としてきたレオくんは、流石に焦りを隠しきれてなくて。
私と月は急いで準備するしかなかった。
そんなこんなで、今。
「こちらで御名前をお願いします」
「【Fluel】の椎堂」
「ホールが会場になっております」
「ルナこっち」
「あっ、うん」
ここではルナって呼ぶんだね。その名前も気に入ってるからいいけど。
シックな雰囲気のホテルに尻込みせずに堂々と。
私は【Fluel】の姫だ。ただでさえ弱いのに、少しでも付け入る見せちゃいけないと、自分に言い聞かせて歩く。
「ん」
「…ありがと」
私が少し怖がっているのを察したのか、月が少し曲げた腕に軽く手を添える。
それだけで安心できるんだから、自分がどれだけ単純なのか……。