堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる
ホールに入った瞬間、雰囲気に呑まれた。
一部の隙間ない、剣呑なオーラがあちらこちらから漂ってきてる。
それは私たちの周りも例外ではないらしく、月は私に薄いベールを被せた。
花嫁さんがするみたいなやつじゃなくて、顔を隠すみたいなのだけど。
「椎堂」
「…飛廉」
「気軽に名前で呼ぶなよ。【Fluel】総長サマ?」
"飛廉"。そう月が呼んだのは、もちろんあのときの真っ直ぐな眼をする彼だった。
私の方を一瞥した彼──夕星さんはすぐに月に向き直った。
「どんな気分だよ、総長は」
「……そっちこそ【Anemone】はどうなんだ」
「自由気ままにやってるよ。【Fluel】とは違う、形式に捉われないやり方で」
「だろうな」
なんで2人は普通に話しているの。心のうちを全部隠した表情で。
見ている限り旧知の仲みたいだけど、私は夕星さんを知らなかったはず。
「椎堂は過保護なままなんだな、昔から変わんない」
「は、俺が過保護?」
「あぁ、俺のことを何も話さないなんて。そのお姫サマはそんなに大切か?それとも怖いのかよ」
「っ、余計なこと言うなよ」