疎まれた王女はドラゴンに愛を語らない・魔法の恋の行方・リズとドラゴン

王女の誘拐事件

疎まれた王女はドラゴンに愛を語らない
ズベットとドラゴン ・魔法の恋の行方シリーズ 
 
<王女の誘拐>

夏が終わりかけているのに、馬車の中はまだ熱気がこもっている。

そのせいもあり、リズは揺れ続ける馬車の中で、吐き気と闘っていた。

日が落ちかけているのに、目的の修道院は、まだ道半ば。

うっそうとした雑木林の小道に入り、川のせせらぎが聞こえてくると、年老いた御者がやっと馬車を止めた。

暑い中、無理をさせて走らせた馬を、さすがに休めなければならないのだろう。

御者の若い助手が降りて来て、馬車のドアを大きくノックした。

リズは大きく息を吐いた。

やっと、暑さと揺れから解放される。

「若奥様、次の村で宿をとりましょう。

日暮れになると、この辺は、強盗が出ると有名な場所ですので」

助手は傷だらけの手を差し出し、リズに降りるように促した。

「わかりました。まだ、遠いですものね。」

リズはハンカチで口を押えて、少しよろめきながら馬車から降りた。

腰も背中も強張り、痛みが出ていた。

< 1 / 92 >

この作品をシェア

pagetop