疎まれた王女はドラゴンに愛を語らない・魔法の恋の行方・リズとドラゴン

奥方の部屋

<奥方の部屋の掃除>

秋の訪れと共に、森は華やかな彩りに染まり、館の日々は穏やかに過ぎていった。

リズは朝と晩にドラゴンの傷の手当をして、アンナの仕事を手伝う。

外回りの仕事はグレーズとエルフの下働きの男たちがやったが、広い館の掃除、洗濯、銀器を磨く、水汲み、料理の下ごしらえなど、リズとアンナの仕事は多い。

そしてよく働く王女の姿を、時折、遠くからドラゴンは見ていた。

ある日、リズが朝食後のテーブルを拭いていると、アンナが声をかけてきた。

「あのう、リズ様、今日は、奥の部屋の掃除をお手伝いいただきたいのですが、

私もグレーズも手の届かない場所があって・・」

「ええ、いいですよ。ご主人様の傷を見たらすぐにやりましょう」

「いや・・ご主人様はもうお出かけです。狩りをすると言って」

グレーズが会話に入った。

「狩りって・・?」

「この領地に勝手に入ってきたやつらを追い出して・・・ついでに金目のものもいただくという」

「グレーズ、リズ様も狩られたのですから・・・」

アンナが神妙な顔をして、グレーズをたしなめた。

「この領地は、何で収入を得ているのですか?」

見たところ、森が深いばかりで、畑も果樹園もない。

グレーズが、その疑問に答えた。

「ここは俺たち、ドワーフたちが少し先の鉱山で、金や銀を掘り出しているんですが、

最近は、なかなかお宝が出なくなってしまって」

アンナが続けた。

「それをエルフたちが、街で売りさばく役目をしていたのですが・・・とんと貧しくなりました」

グレーズの肩が落ちた。

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