疎まれた王女はドラゴンに愛を語らない・魔法の恋の行方・リズとドラゴン
館の長い廊下を、リズはモップとバケツ、アンナは雑巾とはたきを持って歩いていた。
突き当りの奥の大きな扉を、アンナが開けるのを苦労したので、リズも手伝った。
ギシギシギシ・・・
扉がきしんで音を立てて、やっと一人が通れるくらいの隙間が開いた。
中の空気はよどんで、薄暗い。
アンナは手慣れたように、さっさと部屋に入ると、厚手の緞帳のようなカーテンを開けようとした。
が、重くてなかなか開ける事ができず、リズが手伝って、ようやく窓から陽の光が差し込んだ。
それは女主人の部屋、いや部屋だったのだろう。
窓には、手の込んだ織り模様のあるレースのカーテン。
天蓋付きのベッド、鏡台、衣装戸棚、衝立、どれも美しく精緻な工芸家具だ。
鏡台の前に、小さな肖像画が額に入れて置いてあった。
美しいエルフの女性が、花束を抱え微笑んでいる。
顔立ちが、ご主人様に似ている。
リズは鏡台に置かれているヘアブラシや刷毛、香水のガラス瓶など注意して、ほこりを払った。
「ご主人様の・・・お母様のお部屋なのですね」
「ええ、ひと月に一度は、掃除をしないと。使っていなくても埃がたまりますから」
アンナが手早く家具に、はたきをかけはじめた。
「お母様は・・エルフの方だったのですね?」
「緑のエルフの・・お美しい方でした。
もう、グラゴール様が、それは大切になされて」
リズも棚を拭きながら
「グラゴール様とは?・・ご主人様のお父様ですか?」