極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
それぞれの気持ち
 羽衣子の返事を聞いた昴は小さく頷くと、再びアクセルを踏み込んだ。

 エンジン音が低く唸りを上げ、車体が前へ押し出される。

 羽衣子は繋がれたままの手を見つめて少しだけ力を込めたその矢先、昴の耳に装着されたイヤフォンから微かな電子音が鳴った。

「……俺だ」

 羽衣子に相手の声までは聞こえないが、断片的な会話から何か状況が動いていることだけは伝わった。

「――分かった」

 数秒後、昴は通話を切ると進路を変更する。

「京極さん?」
「これから高速に入る」

 そう告げると車は高速道路の入り口へ向かって行き、料金所を抜けて本線へ入ると昴は一気にアクセルを踏み込んだ。

 すると、ミラーに映る追跡車両との距離が少しずつ開いていき、羽衣子は安堵しかけたものの、

「…………!」

 後方からバイクが車の間を縫うように走り抜けながら追い上げてくる。

「…………っ」

 羽衣子が心配そうな表情を浮かべる中、昴は表情一つ変えず、「問題ない」と一言口にして更に加速する。

 その時、後ろから複数台の車が猛スピードで近づいてくる。

「っ……!」

 それを見た羽衣子の身体が強ばり、

(もしかして、相手の仲間が……)

 そう思った瞬間、

「大丈夫だ」

 昴が落ち着いた声で言った。

「あれはうちの組の応援だ」
「え……」

 そう言われて改めてミラーを見ると、確かに追跡車とは違う動きをしている。

 先頭車両が昴の車へ近づき、そのまま後方へ回り込み、まるで盾になるようにピタリと付く。

 更に別の二台が追跡車両の前後へ入り込むと、相手の車は進路を塞がれ減速を余儀なくされた。

「すごい……」

 その間にも状況は変わっていく。

 相手の車を封じられたものの、バイクは尚も追って来る。

 再び車の隙間をすり抜けながら距離を詰めようとしたが、更に後方から現れた七鳳組の車が絶妙な位置取りで進路を塞ぐ。

 その結果バイクは何度も突破を試みるがそのたびに阻まれ、やがて車もバイクも徐々にその姿が小さくなっていった。
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