極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 昴は暫く様子を見ていたが、完全に安全圏へ入ったことを確認すると小さく息を吐く。

「……もう追って来れないだろう」

 その言葉に羽衣子もようやく肩の力を抜いたことで、張り詰めていた緊張が一気に解けていく。

 昴は高速出口へ向けて車線変更すると、そのまま高速を降りて一般道へ戻る。

 気付けば隣県まで来ていて、空を見れば既に夕暮れを過ぎて薄暗くなり始めていた。

「追って来なくなったとは言え、自宅周辺については安全が確保されてない」
「え? あの、希海くんは……」
「希海は大丈夫だ。組長(オヤジ)の屋敷へ避難させているから」
「そうなんですね、良かった……」
「俺たちも今日はこっちで一晩過ごすことにするから」
「え? あ、はい……」

 自宅周辺は危険だし、今から帰るのは流石の昴も疲れてしまうのかもしれない。

 そう判断した羽衣子は昴の言葉に大した疑問を持たずに頷いたのだが、暫くして辿り着いた場所を見た羽衣子は思わず固まった。

「……え?」

 ネオンの灯りに派手な外観に大きな看板。

 これはどう見てもラブホテルだった。

「き、京極さん……?」

 顔を真っ赤にしながら羽衣子は隣を見るけれど、昴は至って真面目な顔だった。

「ここが一番安全だ」
「え?」
「このホテルは協力関係にある組織の管轄で、外部の人間は簡単に手出しできない」

 そう説明されて羽衣子は瞬きを繰り返す。

「そう……なんですか」
「ああ。こんな所で悪いが、一晩我慢してくれ」

 どうやら本当に安全面を考えての選択らしく、羽衣子は少しだけ昴を疑ってしまったことを申し訳なく思いつつも、ホッと胸を撫で下ろした。

 襲われる心配も無いし、追手も来ない。

 少なくとも今夜だけは安心出来る。

 そう思ったのも束の間、ホテルに入った羽衣子は別の意味で鼓動が速くなるのを感じていた。

 それは、これから昴と二人きりでこのホテルに泊まるのだと改めて気付いてしまったから。
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