極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「……酷い……」

 今でこそ人の心が無い考えを持つ想汰だが、昔はそんなことは無かった。

 早くに両親を亡くした羽衣子にとっては優しく頼れる兄だった。

 だからこそ、こんな風に変わってしまったことがたまらなく悲しいのだ。

「……どうして、昴さんを巻き込むの? 私が狙いなら、私だけに何かすればいいじゃない」
「そりゃ、俺だって出来るならそうしたいさ。けど、お前の傍には常にあの京極 昴が居た。ぬいぐるみに入ってた盗聴器に気付いたのもアイツだろ?」
「やっぱり、あの盗聴器はお兄ちゃんが……」
「高遠がそうしろって言うからな。高遠は京極のことを嫌ってるから、お前がアイツと居ると機嫌が悪いんだ。これ以上京極やその子供を危険な目に遭わせたくなけりゃ、お前が奴らから離れるしかねぇんだ。分かるだろ?」
「……っ」
「京極が生きてるなら、朝までにここに来るかもしれない」
「え?」
「そうお前のスマホにメッセージを送ったからな。朝になっても来なけりゃ、死んでるか、生きてても来れない状況か……それとも、お前は見捨てられたかってところだろ」
「…………」
「良いか? もし京極がここに来たら、お前の口から言うんだ、俺らの元へ行くと。そうすりゃ、今後一切七鳳組には手を出さないと高遠は言っていた。奴らをこれ以上危険な目に遭わせたくないなら、そうするしか無いんだ」
「…………」
「羽衣子、また昔みたいに俺と一緒に暮らそう。な?」

 羽衣子には想汰が何を考えているのかが理解出来ない。

 少なくとも、昔の優しかった兄はもういない、それだけは理解出来る。

(昴さん…………私……どうすれば……)

 昴がそう簡単に死ぬはずは無いだろうし、助けに来て欲しいと心では願っていた。

 けれど、これ以上危険な目に遭わせたくないし、無理もして欲しくない羽衣子はどうすればいいのか分からなかった。
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