極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 いつの間にか眠ってしまったようで、羽衣子が目を覚まし、ぼんやりとした頭で枕元の時計に目を向けると時刻は午前二時を過ぎていた。

「……眠っちゃったんだ……」

 こんなに遅くまで眠ってしまったのかと羽衣子がゆっくりと身体を起こしたその時だった。

 部屋の外から微かな物音が聞こえた羽衣子が耳を澄ませてみると階段を上ってくる足音だった。

(昴さん……?)

 そう思った羽衣子は確かめる為に部屋を出た。

 すると廊下へ出たところで、ちょうど階段を上りきった昴と目が合う。

「……昴さん」
「羽衣子」

 思いがけず鉢合わせた二人の間にほんの一瞬、気まずい沈黙が落ちたものの羽衣子は少し戸惑いながら帰りを待っていたことを伝えるように微笑んだ。

「あの……お帰りなさい」
「ああ。ただいま」

 短く返された声には僅かな疲れが滲んでいて、羽衣子は何か言おうとしたけれど言葉を選ぶように口を閉じる。

「…………あの……」

 そんな羽衣子を見た昴は、

「すまない。先にシャワーを浴びてくる」
「あ、そうですよね。すみません……」
「いや、お前は悪くない」

 すぐに否定してから昴は少しだけ視線を逸らした。

「その……シャワーを浴びたら、少し話をしよう」
「……良いんですか?」
「ああ」

 そう答えた昴は表情を和らげる。

「お前の部屋に行ってもいいか?」
「はい。待ってます」
「分かった」

 二人はそれだけ言葉を交わすとその横を昴が通り過ぎた、その瞬間、羽衣子の鼻先を掠めた微かな匂い。

 それは鉄のような、血の匂いに似ていた気がして思わず振り返るけれど、昴は既に書斎へ入ってしまっていた。

(……今の……)

 気のせいだったのだろうか。

 そう思おうとするのに鼻の奥にはまだあの微かな匂いが残っていて、羽衣子の胸は不安でいっぱいになった。
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