極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 昴がお風呂へ入っている間に羽衣子はキッチンで二人分のハーブティーを淹れて自室へ戻る。

 それからほどなくして、控えめなノックの音が部屋に響いた。

「……どうぞ」

 羽衣子の返事と共に扉が開き、シャワーを浴び終えた昴が入ってくる。

「待たせたな」
「いえ、あの、こちらへどうぞ」
「ああ」

 羽衣子にベッドの上へ座るよう促された昴は素直にそこへ腰を下ろすと、羽衣子はその横に座ってベッド脇のチェストの上に置いていたカップを手に取ると昴へ差し出した。

「よかったら、これ……」
「ハーブティーか」
「はい、その、少し疲れているように見えたので……。良かったら飲んでください」
「……ありがとう」

 昴は受け取るとカップに口をつける。

「……うん、落ち着くな」
「良かったです」

 そう答えながら羽衣子は自身のカップを手にして飲むと、横に座る昴に時折視線を向けていた。

 羽衣子は先程別れ際に感じた匂いのことを聞きたかったけれど、

「…………」

 どう切り出せばいいのか分からず口に出来ない。

 そんな中、昴が口を開いた。

「……羽衣子」
「はい?」
「この前言っていた旅行のことだが……」
「旅行……」

 思いがけない話題に羽衣子は少しだけ目を瞬かせる。

 以前話していた二人旅行。

 けれど、色々なことが重なって先延ばしになっていた。

「来週末にしないか?」
「……来週末、ですか?」
「ああ」

 旅行は行きたいと思っているはずなのに何故か躊躇いが生まれてしまう羽衣子。

 だけど、色々なことがあった今だからこそ、何にも縛られずに二人きりで気分転換するのもいいのかもしれない。

 そう考えた羽衣子が、「はい、楽しみにしてますね」と答えると昴の表情が僅かに和らいだ。
< 179 / 200 >

この作品をシェア

pagetop