極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 暫くして、向かっているのが海岸方面だということが羽衣子にも分かる。

 途中、飲み物を買う為にカフェに寄った程度で、車は海岸沿いの道をひたすら走っていく。

 てっきり海へ向かうのだと思っていた羽衣子だったのだが、車は何故か海岸を通り過ぎてそのまま先へと進んでいった。

(何処に向かってるんだろう……)

 疑問には思ったもののそこでも羽衣子はあえて口にしなかった。

 やがて車は海岸沿いの道を離れ、緩やかな坂道を上り始める。

 そして、坂を上り切って高台へ出たところで羽衣子は窓の外に広がる景色に気づいた。

(ここって……)

 そこにあったのは、静かな墓地だった。

「……お墓、ですか?」

 驚いたように呟くと、隣で運転していた昴が少し申し訳なさそうな表情を浮かべて謝った。

「悪いな。せっかくの旅行なのに、こんなところに連れてきて」
「いえ……その、ここって、もしかして……」

 羽衣子が言葉を濁すと昴は静かに頷いた。

「ああ。ここには慶太さんと香恵さんの墓がある。今日は少し報告したいことがあってな……どうしても立ち寄りたかったんだ」
「そう、だったんですね」
「悪いな。すぐ済むから」
「謝らないでください」

 申し訳なさそうに謝る昴に羽衣子は小さく首を横に振った。

「その……私も希海くんのご両親である慶太さんと香恵さんにご挨拶したいと思っていたので……」

 そこで区切った羽衣子は昴の顔を見上げ、

「だから、連れてきてもらえて嬉しいです」

 連れて来て貰えて嬉しいことを伝えると、

「……そうか」

 昴の表情がほんの少しだけ和らいだ。

「そう言ってもらえて安心した。それじゃあ行くか」
「はい」

 二人は車を降りると昴が先に立って歩き出して羽衣子がその隣に並ぶ。

 静かな墓地の中をゆっくりと歩き、いくつもの墓が並ぶ中で一つだけ眼下の景色を遮るもののない場所に立っている墓があり、昴はその墓の前で足を止めた。
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