極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「この宿の離れのお部屋って……お値段……凄くしますよね……」

 案内された部屋を前に羽衣子は落ち着かない様子で室内を見回した。

 旅館の中でも特に格式の高い離れ。

 広々とした和室に贅沢な調度品。

 この部屋専用に広い露天風呂まで備えられている。

 素晴らしい部屋なのが分かるからこそ、自分にはあまりにも不釣り合いな気がしてしまう。

「値段なんて気にするな。折角の旅行なんだから良いところに泊まる方がいいだろ?」

 昴は何でもないことのように言うけれど、

「で、でも……」

 羽衣子は俯き言葉を濁してしまう。

 勿論羽衣子も嬉しくないわけではない。

 ただ、こんなにも高価な部屋を自分の為に用意してもらったことが申し訳なくて、どう反応すればいいのか分からなかったのだ。

 そんな羽衣子の様子を見ていた昴は少し表情を曇らせる。

「……迷惑だったか?」
「え!?」
「お前に喜んでもらいたくてしたことなんだが……普通の部屋の方が良かったか?」

 先程までの余裕のある表情は消え、どこか申し訳なさそう。

「そ、そんなことないです! 嬉しいです、凄く! その……こんなに素敵なところに泊まれるなんて思っていなかったから驚いてしまって……。反応が薄くてすみません……」

 必死に言葉を重ねながら羽衣子は首を横に振る。

「嫌なんてこと全然ないです! 本当に!」
「……そうか」

 羽衣子の言葉に安心したのか昴の表情が緩んだ。

「それを聞けたなら安心だ。俺はお前の喜ぶ顔が一番見たいんだ。だから、もっと素直な気持ちを出してほしい」
「…………はい」
「飯は十九時にしたからまだ時間がある。外を散歩しに行くのでもいいし、部屋でゆっくりするのでも風呂に入ってもいい。どうしたい?」
「……えっと」

 どうしたいか問われて少し考えたあと、羽衣子は窓の外へ視線を向ける。

「折角ですし……少しお散歩してからお風呂に入りたい……です」
「分かった。それじゃあ外に出るか」
「はい!」

 二人は夕食までの時間を過ごす為、まずは旅館の周囲を散策することにした。
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