極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「昨日、羽衣子を連れて、慶太さんと香恵さんの墓参りに行きました」

 昴が静かに話を切り出す。

「紹介したかったのと……二人に、ある報告をするために」
「……そうか」

 亮治が短く答えると、その隣にいた登紀子も穏やかな笑みを浮かべた。

「二人とも、昴が女の子を連れて来て、驚いたのと同時に、きっと喜んでるわね」
「そうだといいんですけどね」

 昴は照れたように笑う。

「それで……その報告というのが、俺が羽衣子にプロポーズするというものでして」
「ほう?」
「まあ……!」

 昴の言葉に亮治と登紀子は顔を見合わせる。

 そんな二人の表情に浮かんだのは驚きよりも喜びだった。

「それで、昨夜羽衣子にプロポーズをして……受けてもらえました」
「そうか」
「良かったわ……」

 結果を聞いて亮治も登紀子も安心して微笑んだのも束の間、ふいにその表情を引き締めると羽衣子へ視線を向けた。

「でも……羽衣子ちゃん、本当にいいのかしら?」
「……え?」
「その……昴と一緒になるということは希海のこともあるし、あなた自身が極道の世界に身を置くことにもなるのよ」

 登紀子の言葉を受けた羽衣子は一瞬だけ言葉を詰まらせた。

 共に生活をして来て少しはその世界に触れてきたつもりではあったものの、結婚をすればこれまで以上にその世界へ深く関わることになる。

 それが決して簡単なことではないのは羽衣子自身も分かっていた。

 それでも――羽衣子はゆっくりと顔を上げて二人を見つめた。

「……正直、プロポーズされた時は驚きました。でも……私も昴さんのことは大好きなので、私を選んでもらえたことは嬉しかったです。だけど、極道の世界については……正直に言うと、まだ怖いです…………兄とのことで色々あって、あの時でさえも怖かったし、慶太さんと香恵さんが争いに巻き込まれて命を落とした話も聞きました。一緒になれば、これまで以上に深く関わり、命の危険に晒されることも増えるかもしれないって……」

 羽衣子のその言葉に昴の表情が僅かに曇る。

「羽衣子……」
「ですけど、それ以上に私は、昴さんと希海くんの傍に居たい……例え、今までと生活が変わったとしても、それでも、私は二人と一緒に居たいんです」

 その言葉には迷いがなかった。

 そして羽衣子は隣にいる昴へ視線を向ける。

「希海くんのことも、これからも変わらずに……いえ、これまで以上に大切にします。慶太さんと香恵さんと昴さんと一緒に、希海くんの未来を見守りたい……希海くんにとっての母親になれるかは分かりませんが、一緒に居てくれて良かったと思われるように、精一杯育てていきたいって思っています。これが、私なりの覚悟です」

 昴の胸に、言い表せない程の嬉しさが込み上げる。

 改めて本人の口から聞いた言葉だったからこそ、その嬉しさは計り知れないもの。

 一方、亮治と登紀子もまた羽衣子の言葉を聞きながら互いに視線を交わして頷いた。

 昴のことだけでは無く、希海のことまで心から大切に思いその未来を案じてくれている。

 そんな羽衣子になら自分たちが大切にしてきた二人を託しても大丈夫だと。

「昴と希海のこと、よろしく頼むよ。羽衣子ちゃん」
「……はい」
「これからは私のことを母親だと思って、何かあったらいつでも頼ってちょうだいね、羽衣ちゃん」
「……ありがとうございます」

 思わず目元を潤ませながら羽衣子は深く頭を下げる。

 その姿を見つめながら昴は思う。

 これから先、何があっても二人で乗り越えていこうと。
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