極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 その後、残りの園児たちの迎えも済んで園内はあっという間に静かになっていく。

 片付けや清掃を終え羽衣子たち保育士も帰り支度を整えた。

「お先に失礼します」
「お疲れさま〜、気をつけてね」

 同僚や先輩たちに見送られ羽衣子は園を後にする。

 外に出ると一台の車が停まっていて、羽衣子に気づいた乙哉は窓から顔を出して軽く手を上げる。

「お疲れさまです、吾妻先生」
「お疲れさまです、ありがとうございます」

 軽く頭を下げてから羽衣子が車に乗り込むと、ゆっくりと走り出した。

「本当にすみません、こんな……わざわざ送っていただいて」

 羽衣子が申し訳なさそうに言うと乙哉は気にした様子もなく笑う。

「気にしてないんで平気っすよ」
「それでも……ご迷惑をおかけして……」
「まあ何も無ければいいけど、何かあってからじゃ遅いんでね、こういうのは」

 その言葉に羽衣子は小さく頷いた。

 乙哉とは何度か会っていることもあって羽衣子も徐々に緊張が解けていき、車内には穏やかな空気が流れる。

 やがて羽衣子の住むアパートが見えてきた。

「到着しました」
「本当にありがとうございました」
「いえ。お疲れさまでした。じゃ、また明日」
「はい。よろしくお願いします。気をつけて帰ってくださいね」
「どーも」

 車を降り、軽く挨拶を交わした羽衣子は走り去っていく車を見送ってアパートの階段へと足を向ける。

 そして、階段を上がって鍵を取り出し、扉の前に立った、その時――ふと、背中に鋭い視線のようなものを感じたた羽衣子は勢い良く振り返る。

「……」

 けれど、そこには誰もいなかった。

(……気のせい……?)

 不安は拭えないものの周りに人の気配も無さそうなので、気のせいだと自分に言い聞かせるように納得した羽衣子は扉を開けて部屋の中へと入っていった。
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