極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
店を出た頃には、夜の空気がすっかり冷えていた。
人通りの多い駅前を並んで歩きながら羽衣子の胸の奥にはずっと盗聴器のことが残っていた。
聞きたい気持ちはあったけれど、結局その言葉は喉元で止まったまま。
「……大丈夫か?」
ふと、隣から想汰の声が落ちてくる。
「顔、ちょっと赤いぞ」
「え? あ、うん……ちょっとだけ酔いが回ってるのかも」
羽衣子が苦笑すると、想汰は小さく息をついた。
「やっぱりな。あんま飲まないって言ってたしな」
そう言って、少し考えるように足を止める。
「タクシー拾うから一緒に乗ってけよ」
「え、でも……」
「いいから。こんな時間だし、そのまま帰すのも心配だから」
羽衣子は一瞬迷ったものの、折角の厚意を無下にするのも悪いと小さく頷いた。
「……ありがとう」
やがて拾ったタクシーに二人で乗り込み、想汰が行き先を告げる。
車内は静かでエンジン音だけが一定のリズムで響いている中、沈黙を破ったのは想汰だった。
「……そういえばさ……この前あげたウサギのぬいぐるみ」
ウサギのぬいぐるみというワードに羽衣子の心臓が、どくんと強く鳴った。
「……どうしてる?」
ほんの一瞬、言葉に詰まる。
脳裏に浮かぶのは、ぬいぐるみの中に仕掛けられていた盗聴器の存在。
それを見つけたことも、処分してしまったことも正直に言うことは出来なくて、
「……飾ってあるよ?」
そう嘘をつく声が硬くなるのを羽衣子は感じていた。
すると、その返答を聞いた想汰は一瞬だけ沈黙し、「……そっか」とだけ呟くように言葉を発していた。
それ以上、ぬいぐるみの話が出ることはなく、やがてタクシーは羽衣子の住むアパートの近くでゆっくりと停まる。
「着いたぞ」
「……うん」
料金を支払おうとする羽衣子を想汰が軽く制した。
「いいって。俺が出すから」
「でも――」
「いいから」
強く言われた羽衣子は小さく頭を下げるしかなかった。
「……ありがとう」
車を降りドアが閉まる直前、振り返ると想汰が軽く手を上げた。
「またな」
「……うん」
短い別れの言葉を交わした後、タクシーはそのまま走り去って行く。
一人残された羽衣子は部屋へと戻り、その瞬間、張り詰めていたものがふっと緩んでいった。
鞄を置いて脱衣場へ向かうと服を脱いで早々にお風呂へ入る。
シャワーを浴びながら居酒屋での出来事を思い出しては頭の中で“大丈夫”という言葉を繰り返していた。
そして、風呂から上がり、髪を乾かして部屋着に着替えてからベッドに腰を下ろしたタイミングでスマートフォンに手を伸ばす。
画面を開くと通知の表示があり、開くと昴からのメッセージが届いていた。
《大丈夫ですか? 困ったことはありませんか?》
短い文面ではあるけれど、その裏にある気遣いが伝わってくる。
羽衣子は一瞬、画面を見つめたまま動きを止めた。
頭の中に浮かぶのはサインした契約書のこと。
不安はあるけれど、それを昴に話せば彼は更に心配をするだろうと思った羽衣子はこれ以上自分のことで負担を掛けたくないと話すことはせず、
《大丈夫です、もう帰宅しました。気にかけてくださって、ありがとうございます》
それだけを送った後で、スマートフォンを置いてそのまま眠りについたのだった。
人通りの多い駅前を並んで歩きながら羽衣子の胸の奥にはずっと盗聴器のことが残っていた。
聞きたい気持ちはあったけれど、結局その言葉は喉元で止まったまま。
「……大丈夫か?」
ふと、隣から想汰の声が落ちてくる。
「顔、ちょっと赤いぞ」
「え? あ、うん……ちょっとだけ酔いが回ってるのかも」
羽衣子が苦笑すると、想汰は小さく息をついた。
「やっぱりな。あんま飲まないって言ってたしな」
そう言って、少し考えるように足を止める。
「タクシー拾うから一緒に乗ってけよ」
「え、でも……」
「いいから。こんな時間だし、そのまま帰すのも心配だから」
羽衣子は一瞬迷ったものの、折角の厚意を無下にするのも悪いと小さく頷いた。
「……ありがとう」
やがて拾ったタクシーに二人で乗り込み、想汰が行き先を告げる。
車内は静かでエンジン音だけが一定のリズムで響いている中、沈黙を破ったのは想汰だった。
「……そういえばさ……この前あげたウサギのぬいぐるみ」
ウサギのぬいぐるみというワードに羽衣子の心臓が、どくんと強く鳴った。
「……どうしてる?」
ほんの一瞬、言葉に詰まる。
脳裏に浮かぶのは、ぬいぐるみの中に仕掛けられていた盗聴器の存在。
それを見つけたことも、処分してしまったことも正直に言うことは出来なくて、
「……飾ってあるよ?」
そう嘘をつく声が硬くなるのを羽衣子は感じていた。
すると、その返答を聞いた想汰は一瞬だけ沈黙し、「……そっか」とだけ呟くように言葉を発していた。
それ以上、ぬいぐるみの話が出ることはなく、やがてタクシーは羽衣子の住むアパートの近くでゆっくりと停まる。
「着いたぞ」
「……うん」
料金を支払おうとする羽衣子を想汰が軽く制した。
「いいって。俺が出すから」
「でも――」
「いいから」
強く言われた羽衣子は小さく頭を下げるしかなかった。
「……ありがとう」
車を降りドアが閉まる直前、振り返ると想汰が軽く手を上げた。
「またな」
「……うん」
短い別れの言葉を交わした後、タクシーはそのまま走り去って行く。
一人残された羽衣子は部屋へと戻り、その瞬間、張り詰めていたものがふっと緩んでいった。
鞄を置いて脱衣場へ向かうと服を脱いで早々にお風呂へ入る。
シャワーを浴びながら居酒屋での出来事を思い出しては頭の中で“大丈夫”という言葉を繰り返していた。
そして、風呂から上がり、髪を乾かして部屋着に着替えてからベッドに腰を下ろしたタイミングでスマートフォンに手を伸ばす。
画面を開くと通知の表示があり、開くと昴からのメッセージが届いていた。
《大丈夫ですか? 困ったことはありませんか?》
短い文面ではあるけれど、その裏にある気遣いが伝わってくる。
羽衣子は一瞬、画面を見つめたまま動きを止めた。
頭の中に浮かぶのはサインした契約書のこと。
不安はあるけれど、それを昴に話せば彼は更に心配をするだろうと思った羽衣子はこれ以上自分のことで負担を掛けたくないと話すことはせず、
《大丈夫です、もう帰宅しました。気にかけてくださって、ありがとうございます》
それだけを送った後で、スマートフォンを置いてそのまま眠りについたのだった。