極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 そんな中、昴は時折ルームミラー越しに希海の様子を確認していた羽衣子へ視線を向け、ふと口を開く。

「今日は、希海がすみませんでした。大変だったでしょう」
「え?」

 その言葉に羽衣子は驚いたように顔を上げ、それから慌てて首を横に振った。

「そんなことないです! むしろ、凄く楽しかったですし」
「楽しい、ですか」
「はい。子供は元から好きですし、希海くんも私を慕ってくれているので、私の方が楽しませてもらってます」

 そう言って柔らかく笑った後、羽衣子は少しだけ表情を和らげた。

「それに私は、あくまでお世話をしているだけですから。実際、親になる方がずっと大変だと思います」

 その言葉に昴は静かに目を細める。

「そうですかね」
「え?」
「確かに、親になるには覚悟が必要ですし、楽なことでありませんが、私は保育士という仕事はとても立派だと思いますよ」
「…………」
「他人の子供を責任を持って預かって、親代わりになって色々なことを教えるんですから」
「…………」
「現に、今日私は吾妻さんから沢山学ばせてもらいました」

 そう言って微笑む昴に、羽衣子の胸がじんわりと熱くなる。

「これも全部、吾妻さんのお陰ですね」
「……っ」

 そんな風に真っ直ぐ認められたことは今まで一度もなかった羽衣子。

 保育士として感謝されたことはある。

 けれど、それが仕事だから当たり前。

“立派だ”と言われたことはなかったのだ。

(……なんで、京極さんは、こんなにも自然に欲しかった言葉をくれるのかな)

 昴の言葉を胸を打たれた羽衣子は、そっと視線を落とした。

 玩具売り場でのやり取りに、三人で歩いたショッピングモール。

“パパとママみたい”と言われて慌てたこと。

 今日一日の出来事を思い返しながら、羽衣子は小さく笑みを零す。

(……なんだか、本当に家族みたいだったな)

 そう思ってしまうくらいに、今日の時間はとても温かかった。
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