極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 暫くは乙哉のみが希海の迎えに行っていたものの、ある日の昼過ぎ、家事を終えた羽衣子のスマートフォンが鳴った。

「え……希海くんが熱を?」
『はい、お昼前から顔色が悪くなってしまって……少し前に熱を測ったら……』

 それは園からの連絡で、幸い高熱ではないらしいが早めに迎えに来て欲しいという内容だった。

 電話を切った羽衣子は乙哉に連絡をする前にふと思う。

「広瀬さん、一人で大丈夫かな……」

 体調を崩した希海は機嫌も悪いだろうからいつも以上に駄々をこねる可能性は十分にある。

 そう考えた羽衣子は乙哉に連絡をする前に昴に連絡をした。

 すると、それを聞いた昴は少し悩んだ末、

『……分かりました。ですが、絶対に乙哉の側を離れないでください』
「……はい」
『何かあればすぐ連絡を』

 迎えに同行する許可をした。

 そして、乙哉が羽衣子を迎えに来てから幼稚園へ向かい希海を引き取り病院へ。

 診察を終え、後部座席ではぐったりした希海が羽衣子に寄りかかって眠っていた。

 その時、運転していた乙哉の表情が変わる。

「……チッ」
「広瀬さん?」
「気のせいかと思ったけど、後ろの車、さっきからずっと付いてきてる」
「え……?」

 その言葉で羽衣子の背筋が凍る。

 ミラー越しに見てみると、確かに一台の黒い車が一定の距離を保ちながら後ろを走っていた。

 乙哉はすぐにイヤホンを耳へ当てると電話を掛け始めた。

「昴さん、俺です。やっぱり来ました。今、後ろに一台」

 それが昴との通話だと分かった瞬間、羽衣子の鼓動が速まった。

 そんな中、短いやり取りの後、乙哉は小さく頷き、通話を切るとすぐにハンドルを切った。

「羽衣子ちゃん、今からちょっとある場所に向かうね」
「え……?」
「ごめんね、相手を撒きたいからちょっとスピード上げるよ」
「…………っ」

 不安に駆られた羽衣子は思わず希海を抱き締める。

 一体どこへ向かうのか、そんな不安を抱えた羽衣子を乗せたまま車は走り続け、やがて追ってきていた車を撒いた上で辿り着いた場所に、

「……え?」

 羽衣子は目を瞬かせた。

 住宅街の中にある一際派手な外観の建物――それはどう見てもラブホテルだった。

(ど、どうしてこんな所に……!?)

 混乱する羽衣子をよそに、乙哉は敷地内へ入ると一台の車の横へ静かに停車する。

 そして、隣に停まっていた黒い車の窓がゆっくりと開くと、

「――京極さん……!」

 そこには、険しい表情をした昴が乗っていた。
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