極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
ざわつく心
 マンションを出てから暫く、車が辿り着いたのは住宅街の一角に建つ大きな一軒家の前だった。

 静かな住宅街の中、その家だけがひどく厳重な空気を纏っていて、門の前には既に数人の男たちが待機していた。

「お疲れ様です兄貴」

 男たちは車を降りた昴へ頭を下げる。

「中も外も問題無いな?」
「はい! 問題ありません!」

 昴の問いに短く返した組員たち。

 それに頷くと昴は羽衣子へ視線を向ける。

「この周囲は問題ありませんので、安心して入ってください」
「は、はい」

 羽衣子は眠そうにぐずる希海を抱きながら、小さく頷いた。

 家の中へ入ると、既に生活できるよう整えられていた。

 広いリビングに複数の部屋。

 ここでは乙哉を含め、ボディーガードも兼ねた組員たちが共同生活することになる。

「吾妻さんは二階の突き当たりにある部屋を使ってください」

 そう声を掛けてきたのは、羽衣子と同い年くらいか少し下の青年だった。

 柔らかな茶髪に人懐っこい笑顔。

 一見とても組員には見えない。

「俺、春川(はるかわ) 皐月(さつき)って言います。吾妻さんの手伝いを任されているので、遠慮せず何でも言ってくださいね」
「……あ、はい」

 あまりにも雰囲気が普通すぎて、羽衣子は少し拍子抜けするも、少しだけ緊張が解けていた。

「希海は私が部屋へ寝かせますので、吾妻さんは休んでください。色々あって疲れたでしょうから」

 中へ入り、羽衣子から希海を抱き上げた昴がそう言ったものの、羽衣子はすぐに頷けなかった。

 だいぶ落ち着いたとは言え、あんなことがあったあとで一人になるのが怖いのだ。

 それに、

「……あの、希海くんの傍に居たいので、眠るまで私が付き添ってあげてもいいですか?」

 怖い思いをさせてしまった希海の傍に居てあげたいと思った羽衣子が控えめに尋ねると、

「分かりました。それではお願いしますね」

 いつも通りの笑顔を向けた昴に了承を得たので、共に昴と希海の寝室へと向かって行った。
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