僕の秘密と、彼女の嘘
「どうしてそんなにメイク上手いの?」

「うーん、お姉ちゃんたちの影響かな?」

聞けば七瀬には姉が三人いるらしく、全員、服飾や美容系の道に進んでいるらしい。
なるほど、英才教育だと妙に納得した。

「私、小さい頃からお姉ちゃんたちの着せ替え人形で……」

そう言って笑う七瀬が、少し照れたようで、少し困ったようで。
空気が重くなったのを感じて気まずくなって再び鏡を見る。

「……これだけ雰囲気変わると、服も欲しくなるな」

「買い物! 一緒に行こ!」

七瀬の顔がぱあっと輝いた。
さっきとは違う、曇りのない笑顔。

「一緒に行ってくれる?」

「もちろん! 土曜日どう?」

「空いてる」

こうして、今日初対面とは思えない速度で約束が成立した。

*

駅前。

「じゃあ土曜日にね!」

駅に着くと、七瀬はくるりと振り返った。
茜色の夕日を背にした笑顔が、まぶしい。

「七瀬、ありがとう」

僕は言う。必ず言わなきゃと思ってた。

「こっちに引っ越してきてから、ずっと心細かったんだ。男子校で、周り男ばっかで……。だからさ。女の子と話せるの、ちょっとほっとする」

「……響」

七瀬の表情が揺れた。

でもすぐに、笑顔に戻る。

「私も、響と仲良くなれてうれしい」

手を振って、駅へ消えていく。

――何か、言いかけたように見えた。
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