僕の秘密と、彼女の嘘
廊下に出た瞬間、張りつめていた息が少しだけ緩んだ。

この春、引っ越しをきっかけに僕はこの学校へ編入した。
美術系の高校としては有名で、ずっと憧れていた場所。

親の反対も、心配も、全部振り切って選んだ。

――それなのに。

たった二週間で、後悔がじわじわと膨らんでいる。

クラスメイトとの圧倒的な技術差。
デッサンの線の迷いのなさ、色彩感覚の鋭さ、構図の完成度…。

僕が前の学校で「頑張ってきた」と思っていたものは、ここでは“基礎の基礎の、そのまた基礎”。

それを思い知らされる毎日だ。

編入してすぐ、放課後の補修が始まった。
先生と一対一で、習っていなかった内容を埋めていく。

新しい知識を吸収するのは楽しい。
でもそのたびに思う。

――この差、本当に埋まるのかな。

ガラス張りの渡り廊下を歩く。

両側には、卒業生たちの作品がずらりと並んでいる。
どれも圧倒的で、眩しくて、遠い。

思わず、ため息がこぼれた。

「きついなぁ……」
< 2 / 27 >

この作品をシェア

pagetop