僕の秘密と、彼女の嘘

茜色の距離

昇降口を出たところで声をかけられた。

「あれ? (ひびき)?」

振り向くと、同じクラスの三人がいた。

潤平(じゅんぺい)朱真(しゅま)(みなと)

まだ名前を呼ぶのに少し緊張する相手。

「部活?」

そう聞かれて、思わず苦笑する。

「ううん、補修。習ってないことが多いし、単位も足りてないからさ」

自虐が混じるのを止められなかった。

「そっかー、大変だなー」

「みんなは? 部活?」

「うん」と潤平が答える。
「俺と朱真が剣道部で、湊がバスケ部」

軽く相槌を打ちながら、内心では驚いていた。

部活もやって、あれだけ絵も上手いなんて。

神様、不公平じゃない?

荒れ気味の心が、少しだけ黒く呟く。

「響は部活しないの?」
朱真が爽やかな笑顔で聞いてくる。

「三年からの編入だしね。補修もあるし、どうしてもってわけじゃないなら入らなくていいって」

「がんばれよ。困ったら相談のるから」

湊が言う。

見上げる。
背が高い。バスケ部。しかもクラスで一番絵が上手い。

やっぱり神様、配分ミスってるよね?

「ありがとう」

三人と別れ、とぼとぼ歩き出す。

そのとき、ポケットの中のスマホが震えた。

母からのメッセージ。
仕事で帰りが遅くなることと、今日の課題曲の注意点が長文で書かれている。

――ああ、そうだ。

帰ったらピアノの練習もしなきゃ。

学校のことだけでもいっぱいいっぱいなのに。

「きついな……」

同じ言葉が、また口からこぼれた。

茜色の空は、やけに広くて。

僕だけが、少し取り残されている気がした。
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