遅かれ、早かれ、恋になりまして。
「好きです。俺のほうが、先に先輩のこと好きでした」
「え?何言って……」
冗談で笑い飛ばそうと思ったのに、八木くんの表情を見た瞬間、その気持ちは消えた。
まって……本当に?
頭が追いつかない。
八木くんが前に言っていた“いつも見てます”っていう言葉も、私は勝手に“仕事の先輩として”の意味だと思い込んでいた。そんなふうに見られていたなんて、考えたこともなかったから。
八木くんの気持ちに、私は全然気づけていなかった。なんで気づかなかったんだろう。あんなに真っすぐ見られていたのに。自分のことでいっぱいで、見えていなかった。そう思った瞬間、無性に泣きたくなった。
もしかしたら今の八木くんは、私と同じ場所に立っているのかもしれない。好きな人に気持ちを伝えて、その返事を待って、たった一言で全部が変わってしまう怖さを抱えながら立っている。
じゃあ私は、なんて言えばいいんだろう。何を返せば正解なんだろう。もし今、私が八木くんみたいに有馬さんに気持ちを伝えたら。もし、有馬さんが答えてくれるなら。私は、なんて言われたいんだろう。
頭の中でぐるぐる考えるのに、結局一つしか分からなかった。
有馬さんに言われたい言葉を、私は八木くんに返してあげられない。
「……ごめんなさい」
それしか言えなかった。傷つけたくないのに、傷つけるしかないのが苦しかった。
「俺のどこがダメですか」
ゆっくり顔を上げると、そこには何一つ表情を変えない八木くんがいた。
「八木くんがダメなわけじゃない。私がずっと、有馬さんじゃないとダメなの」
口にした瞬間、自分で自分に引き返せない線を引いた気がした。
でも、ほんとにそうだった。出会ったときから。初めて見つけた瞬間から。きっと私はずっと、有馬さんを目で追っていた。