遅かれ、早かれ、恋になりまして。

『ヤヨはね。遅かれ早かれ、その人のこと好きになると思うよ』

ふと、佳奈子に言われた言葉を思い出す。あのときは「まさか」って笑って流したのに、今になって思えば全部見抜かれていた。さすが名探偵佳奈子だ。私は見事なくらい、そのまんま罠にハマってしまった。

気づいたときにはもう遅かった。好きになってしまった。有馬さんのことを。


「気づいたのは、最近なの。脈がないから多分伝えることもないと思う。迷惑だろうし」


言葉にした瞬間、胸の奥がずきっと痛んだ。なんで自分でこんなこと言うんだろう。でも、期待したら終わる気がした。優しくされた理由を勝手に勘違いして、ひとりで傷つく未来が怖かった。


「先輩は、俺に告られてどう思いました?」

「嬉しかった、ほんとに」


その言葉に嘘はなかった。誰かに好きだって言ってもらえることが、こんなにも嬉しくて、怖くて、心を揺らすものなんだって、今の私はちゃんと知っているから。


「じゃあ、有馬さんもきっとそうですよ」

「っ、」

「その気持ち、なかったことにするの勿体ないです。俺は今、先輩に伝えて後悔なんてしてませんよ」


八木くんはそう言って、ふわりと笑った。


「だから、先輩も後悔しないようにしてくださいね」


その言葉が、静かに胸の奥へ落ちていく。

私はちゃんと、八木くんにとっていい先輩でいられたんだろうか。支えていたつもりだったのに、気づけば私のほうがずっと貰ってばかりだった。言葉も、優しさも、勇気も。


「八木くん、ありがとう」


やっとそれだけ言うと、八木くんは少し照れたみたいに笑って、「いえ。これからも後輩としてよろしくお願いします」と返した。

その言い方がいつも通りすぎて、逆に泣きそうになる。
告白なんてなかったみたいに戻ろうとしてくれていることが、優しくて、苦しかった。
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