遅かれ、早かれ、恋になりまして。
会議室の前で一度だけ息を整えてから、私はドアノブに手をかけた。
扉を開けると、中で待っていた二人がすぐに立ち上がる。高瀬課長と、八木くんだ。課長はいつも通り落ち着いた所作で軽く会釈し、八木くんも慌てることなく名刺を差し出す。
形式的なやり取りが一通り終わると、互いに軽く頷き合い、そのまま全員が席へと着いた。
目の前には資料とノートパソコン、そして少しだけ早い鼓動。深呼吸をひとつして視線を上げると、向かい側にはNEXERA株式会社のメンバーが並んでいる。
中央に座る有馬さんの姿が自然と視界に入るたび、意識しないようにしているのに、どうしても目が引き寄せられてしまう。
「それでは、始めさせていただきます」
課長の声が会議室に落ちると同時に、空気が一段階だけ引き締まったのが分かった。
中央にいるのが有馬さんだと意識しないようにしても、視界は勝手に彼の位置を捉えてしまう。私は一度だけ小さく息を吸って、スライドを表示した。
「本日はお時間いただきありがとうございます。まず弊社から、貴社新サービスの法人向けプロモーション戦略についてご提案させていただきます」
声が少しだけ固い。でも、今はそれでいいと思った。緊張を隠すより、前に進めることの方が大事だ。
クリックすると、最初のスライドが映し出される。市場環境のデータと、法人向けITサービスの成長グラフ。私は視線を画面に固定したまま続ける。
「まず前提として、国内の中小企業における業務効率化ニーズは年々増加しており、特にクラウド型ソリューションへの移行が進んでいます」