遅かれ、早かれ、恋になりまして。
「先輩、こういうのは力強いんですね」
「ちょっと、どういう意味ー!?」
クスクス笑う八木くん。
仕事もできるようになって、成長が早いな、なんて3つしかかわらないのに親の気分だ。ひょろひょろしていそうで子犬だと思っていた八木くんが以外にも力持ちだったことに感心。
男だったらみんな余裕、なんて言っていたけれど――
その言葉の途中で、ポン、と頭の中に一人の顔が浮かんだ。
「だめだめだめだめ…」
「え?急になんですか?」
「戻ろ、八木くんっ」
眉を寄せる八木くんの背中を押して、私は勢いのまま資料室から出る。
「どうしたんですか?」
「……。」
言えない。
有馬さんだったら、どうなんだろう、とか。
シュッとしてるのに、意外と筋肉はありそうだな、とか。
さっきの、男なら誰だって余裕発言からの連想で、完全に脳内が余計な方向に脱線してしまったなんて。
そんなこと、口が裂けても言えるわけがない…!!!
私は曖昧に視線を逸らして、「なんでもない!」とだけ返す。
八木くんは納得していない顔のまま、でもそれ以上は追及してこなかったけれど、頭の奥ではまだ、有馬さんの顔が勝手に残像みたいに居座っていた。