本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで
私が答えるや否や、女性は真っ赤な唇を歪めて笑った。
「そうよね! あんなイケメンがこんな地味な女と付き合ってるワケないものね」
「……!」
不躾な人だと感じていたけれど、まさかこんなにストレートに悪意をぶつけられるとは思ってなくて。
とっさに何の言葉も出てこない。私が呆然としている間に女性はハイヒールの音を響かせて帰って行った。
「何だったの……」
溜め息混じりにぼやきながら玄関に入る。なんだかドッと疲れてしまった。
「ボーッとしてる場合じゃない、買ってきた食材を冷蔵庫に入れなきゃ。その後はリビングの掃除だ」
藍堂先生は今、苅安出版ではない別の出版社の打ち合わせに行っていて、不在だ。
書斎にこもっている時はリビングの物音は気にならないと言っていたけれど、万が一創作の邪魔をしてしまわないかが心配なので、本格的な掃除は藍堂先生が外出中に済ませておきたい。
買ってきた食材をひとつひとつ冷蔵庫に入れている間も、リビングの掃除をしている間も、さっきの女性のことが頭から離れない。
(失礼な人だったけど、あんなゴージャスな美人なら、藍堂先生とお似合いだろうなぁ……)