本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで

「ただいま」

 玄関を開ける音と藍堂先生の声がして時計を見ると、20時を過ぎたところだった。

「あっおかえりなさい」

 ちょうど玄関横の洗濯室にいたので、顔を出して藍堂先生を出迎えたのだけれど。
 藍堂先生は呆けたような顔をして、立ち尽くしているのだ。

「藍堂先生、どうかしました?」

 すると藍堂先生はハッとした表情をした。

「いや、帰宅した時に『おかえりなさい』って出迎えられた経験があまりないから、慣れてなくて……」

 ああなるほど。藍堂先生ってこどもの頃、鍵っ子とかだったのかな。

「無意識に言っちゃいましたが、馴れ馴れしかったらすみまーー」
「違う、逆だ。いいものだなって……。ありがとう。これからも言ってくれるとうれしい」
「? はい。あ、そういえば17時頃、苅安出版の方が家に来られました。すぐに帰ってしまわれましたが……」

 暴言を吐かれたことは、必要のない情報なので伏せておくことにした。
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