本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで

(ロクな服がない!)

 クローゼットをひっくり返しても、地味な服しか出て来ない。
 それはそう。地味な服しか買ってないんだから。
 でも、一緒に行動する藍堂先生に恥をかかせるわけには行かないよ……。

「この服が私の服の中で一番華やかかなぁ……」

 小さな服の山から、紺色のワンピースを広げて持ってみる。
 少し前に、友人の結婚式に出席するために購入した一張羅だ。
 これにベージュのローヒールのストラップパンプスと、小振りのバッグ、アクセサリーは一粒ダイヤがついたプラチナのネックレスと、セットのイヤリングを合わせたら、ドレスコードのあるレストランでも浮かないはず。


 約束の時間の5分前になったので、個室から出てリビングに行くと、藍堂先生がソファーに座っていた。

「藍堂先生、こんな服装で大丈夫でしょうか……?」
「……ああ、大丈夫」

 一瞬間があったような?
 もっとパステルピンクとかの華やかなワンピースを買っとけばよかった。
 大丈夫だと言ってくれたので、藍堂先生を信じよう。
 藍堂先生は腕時計を見て、「そろそろ出よう」と言った。

< 34 / 86 >

この作品をシェア

pagetop