唯一無二の私たちだから
私の家族は朱莉だけなんだよ
ピンポーン。
そんな音が鳴って、私はバタバタと玄関まで足を進めた。
ガチャ。
勢いよくドアを開けると、そこにはお父さんと記憶から少し歳をとったお母さん、それから女の子がいた。
女の子はうすい桃色の髪をハーツフインにして黒いリボンで縛っており、茶色い瞳で爽やかな雰囲気の子。
顔立ちがお母さんに似てる。
この子、お母さんの再婚相手との子だ。
すぐにピンときた。
年は5歳くらい下だろうか。
中学生くらいに見える。
ちなみにお母さんは、このこと同じうすい桃色の髪を下ろしていて、紫の瞳をしてる。
今日も記憶の中通り、濃いメイクをしていた。
「じゃあ、入って」
私はそっけなくそう言った。
「あれが、私のお姉ちゃん…」
そう呟いた女の子だったけど、私は見向きもしなかった。
どう言う意図で連れてきたのかは知らないけど、いい気は全くしなかった。
——私の家族は、朱莉だけなんだよ。
そう心の中で呟きながら、私は3人をソファに座らせた。
私はその前に事前に用意したイスに座った。
初めに声を出したのは、お母さんだった。
「大きくなったのね、夢叶。……ごめんなさい、今まであなたをしっかり見てあげなくて。あのね、夢叶さえよければまた私かお父さんと暮らしてほしいの。夢叶の力になりたいのよ」
お母さんは真剣な顔でそう言った。
そうは言ってるけど、内心どう思ってるかわからない。
ちゃんと本心をあぶり出さないと。
「そう言ってくれてうれしい。だけど、私はもう大丈夫だよ。こうやって自分で生活できてるんだもの」
私はにこっと笑って見せた。
その時、お母さんとお父さんの表情が少しくもった。
「そんなこと言わないで。ほら、あなたの帰りを待ってる妹もいるのよ?」
そう言って隣の女の子に、視線を移させた。
私は表情を変えず、女の子に言った。
「ねえ、お名前は?」
いきなり話しかけられて驚いているみたい。
「え、えっと、私は夜野真季っていいます…!」
「そっか。私は夜野夢叶。よろしくね」
真季ちゃんは私と話せたのが嬉しいのか、表情を明るくさせた。
お母さんたちの表情も戻った。
私が真季ちゃんを気に入ったと思ったのだろうか。
どうやら、私をどうしても連れ戻したいみたい。
そしてその後、お母さんはとんでもない発言をした。
「夢叶、きっとあなたはいい俳優になれるわ。私は夢叶がそうなると知っていたら、捨てたりしなかった。ごめんなさい、あなたの本当の魅力に気づいてあげられなくて」
私はその言葉に、冷ややかな目を向けた。
ああ、騙されなくてよかった。
今更私を連れ戻したい理由が、やっとわかった。
私がこの人たちにとって、有能な道具だからだ。
お金を稼いでくれれば、自分たちの暮らしは楽になる。
そういうことだったのだ。
——もう限界だ。
「申し訳ないけど、私は帰れない。私を道具としか思ってない人たちのところになんて、帰りたくない!!私の家族は、朱莉だけなの!!」
私の言葉にお父さんが立ち上がり、強引に私の腕をつかんだ。
痛いくらいに握ってきて、私は抵抗できなかった。
そうして、お父さんは私に怒鳴りつける。
「いい加減にしろ!!せっかくお前が使えるようになったと思ってきてやったのに、なんだその態度は!!」
ズキンッと胸が痛んだ。
やっぱり、この人たちは“私”見てくれない。
ボロボロと涙がこぼれた。
「泣いてればいいと思ってるだろ!?いつから、そんな卑怯な子になったんだ!!」
「そうよ。あなたは、私たちに従ってればいいの」
怖い…!!
この人たちの言いなりになんてなりたくないのに。
でも、この場に私を助けてくれる人なんていない。
私がギュッと目をつぶった。
結局、私ひとりじゃなにもできない。
そう考えていた時、毎日聞いていた大好きな人の声が聞こえた。
「おい、なにやってんだよ。夢叶はお前らの道具じゃねぇんだよ」
グイッと後ろに引っ張られて、私は彼の腕に包まれた。
青空色の瞳と視線が合い、彼が帰ってきたのだと私に教えてくれた。
「しゅ、り…」
「夢叶、ごめんな。待たせて」
さっきとは違う、優しいいつもの声。
優しい手つきで私の涙をぬぐってくれた。
——ああ、朱莉だ。
「朱莉…!朱莉…!!」
私は何度も朱莉を呼んだ。
帰ってきてくれて、私を助けてくれて。
——ありがとう。
「だ、誰なんだきみは!?不法侵入じゃないか!」
「俺は夢叶の家族だ。夢叶のたったひとりの家族だ」
「なにを言ってるんだ!!夢叶を騙して——」
「隼和さん」
ヒートアップしそうなお父さん…夜野隼和さんを止めた。
私は涙をぬぐい、まっすぐに両親を見て言った。
「朱莉は私のたったひとりの家族です。あなたたちは違う。家族は娘を道具扱いしません。もう終わったんです、私たちの関係は。だって私は、捨てられたのですから。でも、感謝してます」
隼和さんもお母さん…伊桜さんも私を見つめて、なにも言わない。
朱莉は優しい目で私を見てくれている。
見守ってくれてる。
もう、大丈夫。
「捨てられたおかげで、私は朱莉に会えたから…!私にはもう、朱莉しかないんです。だから、これで関わるのも終わりにしましょう」
「な、なにを言って——」
「おじさん!!」
隼和さんの声を、さっきまで一言も喋らなかった真季ちゃんがかき消した。
真季ちゃんは私に頭を下げた。
「私のお母さんとおじさんが迷惑かけてごめんなさい!あの、夢叶さん!今日はこれで帰ります!え、えっと…また……また、話せますか?」
キュッと目をつむって、一生懸命に言ったその姿に悪意はなかった。
ホッとした。
この子は大丈夫だって、そう思えた。
だから、私は真季ちゃんの頭をそっとなでて言った。
「うん。もちろん。私の電話番号教えておくね」
そう言って電話番号を紙に書き、真季ちゃんに渡した。
隼和さんと依桜さんはポカンとして見ていたが、なにか文句を言うことはなかった。
「本当に、すみませんでした!お母さん、おじさん、帰ろう」
真季ちゃんはふたりの手を引いて、部屋を出ていった。
終わったのか。
真季ちゃんに助けられちゃったな。
あの子は大丈夫だろうか?
しばらくそんな考えが頭の中を回っていたが、朱莉に抱きしめられてその考えも吹き飛んだ。
私は朱莉を見上げた。
「終わったのかな。これで」
朱莉の言葉に、私はゆっくり頷いた。
そうして数分経って落ち着き、私たちは飲み物を用意していつものようにふたりでソファに座った。
朱莉の次の言葉はこうだった。
「ごめん。俺が離れたせいで、夢叶を危険にさせた。本当にごめん」
「……うん。あの…さ、私、朱莉がどうして帰ってこようって思ったのか知りたいな」
朱莉は私の言葉に驚いた後、真剣な顔で頷いた。
「わかった」
そうして、朱莉は私にこの2日間であったことを話してくれた。
そんな音が鳴って、私はバタバタと玄関まで足を進めた。
ガチャ。
勢いよくドアを開けると、そこにはお父さんと記憶から少し歳をとったお母さん、それから女の子がいた。
女の子はうすい桃色の髪をハーツフインにして黒いリボンで縛っており、茶色い瞳で爽やかな雰囲気の子。
顔立ちがお母さんに似てる。
この子、お母さんの再婚相手との子だ。
すぐにピンときた。
年は5歳くらい下だろうか。
中学生くらいに見える。
ちなみにお母さんは、このこと同じうすい桃色の髪を下ろしていて、紫の瞳をしてる。
今日も記憶の中通り、濃いメイクをしていた。
「じゃあ、入って」
私はそっけなくそう言った。
「あれが、私のお姉ちゃん…」
そう呟いた女の子だったけど、私は見向きもしなかった。
どう言う意図で連れてきたのかは知らないけど、いい気は全くしなかった。
——私の家族は、朱莉だけなんだよ。
そう心の中で呟きながら、私は3人をソファに座らせた。
私はその前に事前に用意したイスに座った。
初めに声を出したのは、お母さんだった。
「大きくなったのね、夢叶。……ごめんなさい、今まであなたをしっかり見てあげなくて。あのね、夢叶さえよければまた私かお父さんと暮らしてほしいの。夢叶の力になりたいのよ」
お母さんは真剣な顔でそう言った。
そうは言ってるけど、内心どう思ってるかわからない。
ちゃんと本心をあぶり出さないと。
「そう言ってくれてうれしい。だけど、私はもう大丈夫だよ。こうやって自分で生活できてるんだもの」
私はにこっと笑って見せた。
その時、お母さんとお父さんの表情が少しくもった。
「そんなこと言わないで。ほら、あなたの帰りを待ってる妹もいるのよ?」
そう言って隣の女の子に、視線を移させた。
私は表情を変えず、女の子に言った。
「ねえ、お名前は?」
いきなり話しかけられて驚いているみたい。
「え、えっと、私は夜野真季っていいます…!」
「そっか。私は夜野夢叶。よろしくね」
真季ちゃんは私と話せたのが嬉しいのか、表情を明るくさせた。
お母さんたちの表情も戻った。
私が真季ちゃんを気に入ったと思ったのだろうか。
どうやら、私をどうしても連れ戻したいみたい。
そしてその後、お母さんはとんでもない発言をした。
「夢叶、きっとあなたはいい俳優になれるわ。私は夢叶がそうなると知っていたら、捨てたりしなかった。ごめんなさい、あなたの本当の魅力に気づいてあげられなくて」
私はその言葉に、冷ややかな目を向けた。
ああ、騙されなくてよかった。
今更私を連れ戻したい理由が、やっとわかった。
私がこの人たちにとって、有能な道具だからだ。
お金を稼いでくれれば、自分たちの暮らしは楽になる。
そういうことだったのだ。
——もう限界だ。
「申し訳ないけど、私は帰れない。私を道具としか思ってない人たちのところになんて、帰りたくない!!私の家族は、朱莉だけなの!!」
私の言葉にお父さんが立ち上がり、強引に私の腕をつかんだ。
痛いくらいに握ってきて、私は抵抗できなかった。
そうして、お父さんは私に怒鳴りつける。
「いい加減にしろ!!せっかくお前が使えるようになったと思ってきてやったのに、なんだその態度は!!」
ズキンッと胸が痛んだ。
やっぱり、この人たちは“私”見てくれない。
ボロボロと涙がこぼれた。
「泣いてればいいと思ってるだろ!?いつから、そんな卑怯な子になったんだ!!」
「そうよ。あなたは、私たちに従ってればいいの」
怖い…!!
この人たちの言いなりになんてなりたくないのに。
でも、この場に私を助けてくれる人なんていない。
私がギュッと目をつぶった。
結局、私ひとりじゃなにもできない。
そう考えていた時、毎日聞いていた大好きな人の声が聞こえた。
「おい、なにやってんだよ。夢叶はお前らの道具じゃねぇんだよ」
グイッと後ろに引っ張られて、私は彼の腕に包まれた。
青空色の瞳と視線が合い、彼が帰ってきたのだと私に教えてくれた。
「しゅ、り…」
「夢叶、ごめんな。待たせて」
さっきとは違う、優しいいつもの声。
優しい手つきで私の涙をぬぐってくれた。
——ああ、朱莉だ。
「朱莉…!朱莉…!!」
私は何度も朱莉を呼んだ。
帰ってきてくれて、私を助けてくれて。
——ありがとう。
「だ、誰なんだきみは!?不法侵入じゃないか!」
「俺は夢叶の家族だ。夢叶のたったひとりの家族だ」
「なにを言ってるんだ!!夢叶を騙して——」
「隼和さん」
ヒートアップしそうなお父さん…夜野隼和さんを止めた。
私は涙をぬぐい、まっすぐに両親を見て言った。
「朱莉は私のたったひとりの家族です。あなたたちは違う。家族は娘を道具扱いしません。もう終わったんです、私たちの関係は。だって私は、捨てられたのですから。でも、感謝してます」
隼和さんもお母さん…伊桜さんも私を見つめて、なにも言わない。
朱莉は優しい目で私を見てくれている。
見守ってくれてる。
もう、大丈夫。
「捨てられたおかげで、私は朱莉に会えたから…!私にはもう、朱莉しかないんです。だから、これで関わるのも終わりにしましょう」
「な、なにを言って——」
「おじさん!!」
隼和さんの声を、さっきまで一言も喋らなかった真季ちゃんがかき消した。
真季ちゃんは私に頭を下げた。
「私のお母さんとおじさんが迷惑かけてごめんなさい!あの、夢叶さん!今日はこれで帰ります!え、えっと…また……また、話せますか?」
キュッと目をつむって、一生懸命に言ったその姿に悪意はなかった。
ホッとした。
この子は大丈夫だって、そう思えた。
だから、私は真季ちゃんの頭をそっとなでて言った。
「うん。もちろん。私の電話番号教えておくね」
そう言って電話番号を紙に書き、真季ちゃんに渡した。
隼和さんと依桜さんはポカンとして見ていたが、なにか文句を言うことはなかった。
「本当に、すみませんでした!お母さん、おじさん、帰ろう」
真季ちゃんはふたりの手を引いて、部屋を出ていった。
終わったのか。
真季ちゃんに助けられちゃったな。
あの子は大丈夫だろうか?
しばらくそんな考えが頭の中を回っていたが、朱莉に抱きしめられてその考えも吹き飛んだ。
私は朱莉を見上げた。
「終わったのかな。これで」
朱莉の言葉に、私はゆっくり頷いた。
そうして数分経って落ち着き、私たちは飲み物を用意していつものようにふたりでソファに座った。
朱莉の次の言葉はこうだった。
「ごめん。俺が離れたせいで、夢叶を危険にさせた。本当にごめん」
「……うん。あの…さ、私、朱莉がどうして帰ってこようって思ったのか知りたいな」
朱莉は私の言葉に驚いた後、真剣な顔で頷いた。
「わかった」
そうして、朱莉は私にこの2日間であったことを話してくれた。