いじわる主治医は、私にだけ甘い
彩人の私の全てを包み込んでくれるような愛と、慶人の荒くとも心を付く痛みさえ伴う好意を浴びて、冴は本当に迷った。

「慶人さん、気持ちは本当に嬉しいんです。私なんかを気にかけてくれて。でも私は彩人と付き合ってるんです」

「分かっているさ。でも僕にも少しだけでいい。時間をくれないか。君たちはハワイに行って親睦を深めたんだろう? なら僕にも時間をくれ。ハワイほど長くなくてもいい」

「でも……」

「彩人にはこの間のやり返しだと言っておく。あいつが休みの間、本当に忙しかったからな。それに花野さんには休養が必要だよ。手術をするにしても迷いがあるなら、今はゆっくり自分を労わっていいんだ」

「慶人さん、優しいんですね」

「いや、彩人の恋人を奪おうとしてることに代わりはないさ。でも本当に君のために今できることをしたいんだ」

でも、彩人は本当に許してくれるだろうか。
慶人さんと二人出かけるようなことを。

「あいつが許してくれるか、考えているなら大丈夫。僕が説得するから。君は何も心配しなくてもいい」

そう言うとまた私の髪を撫でながら、ぎゅうと抱きしめてきた。
正直に言うと、色んなことに弱っていた私は今度は嫌がりもせずにそのまま体を慶人さんに預けてしまった。

「はい……私をどこかに連れてってください。何も考えなくていい場所へ」

「分かったよ。冴……今までよく頑張ったな」

「慶人……」

涙が流れていた。
慶人の前では強がりも何もかも流されてしまう。
ありのままの自分がそこにはいた。



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