いじわる主治医は、私にだけ甘い
米子空港に無事到着し、そこからはタクシーで実家まで向かった。土地勘のない彩人にレンタカーを運転させるより、早く済むと思ったし。
挨拶が終わったらホテルに一泊してすぐに帰るつもりでいる。
「本当に、彩人の家に比べたら普通の家だから驚かないでよ」
「別にそんなの気にしてない」
「分かってるけど……あと弟たちがかなりうるさいと思うけど」
「それも察してるけど、弟4人ってのはなかなか想像できないな」
「まぁね。ほんと動物園みたいな家だから」
「ハハッ、じゃあ冴はレッサーパンダってとこだな」
「なにそれ」
「ペンギン」
「それもヤダ!」
彩人はライオンみたいって言おうと思ったけど、やめた。
もっとからかわれる気がしたから。
「もうすぐかな」
「うん、あとちょっと」
そして遂に我が実家へ着いてしまった。
何年ぶりだろう、少し震える指でインターフォンを押そうとすると、
「大丈夫だ、俺がいる」
と彩人が代わりに押してくれた。
玄関から早速懐かしい母の足音が聞こえる。
「はーい! あら、早かったわね〜お父さん〜冴達が来たわよ」
「初めまして、桐ヶ谷彩人と申します。本日はよろしくお願致します」
「桐ヶ谷さん、よろしくお願いします。母の花野萌(めぐみ)です。どうぞ中へ」
私は何も口にできず、玄関の中へと入る。
「さえねぇーちゃーん!!!」
リビングに行くと、弟たちのねえちゃんの大合唱が待っていた。
「はいはい、楓(かえで)たち静かにして。後でゆっくり話すから今はおねぇに話をさせて」
「……君が桐ヶ谷君か、よろしく」
「お父様、初めまして。こちら、名刺です。東京で桐ヶ谷産婦人科の院長をしております桐ヶ谷彩人と申します」
「あらお医者さんですって。すごいですねぇ」
「家親の七光りといいますか、継いだだけでして」
「……冴はどうなんだ」
「はい。彩人さんとは子宮筋腫ができて、病院にかかった時に出会いました。子宮筋腫の手術もして治療もしてくれました。だけど、私は彩人さんの医者としての素晴らしさだけでなく、人としての弱さを支えたいと思うようになりました」
「私も冴さんが図書館で司書として働く様子を見て、輝いてる部分には憧れ、弱さは守りたいと思うようになりました」
「色々あったのね。全然帰ってこないから心配してたのよ」
「冴もほかの子供も、いずれは自立せねばならないが、それは独りでやっていくこととイコールではない。冴がこんなにしっかりした桐ヶ谷さんという人としての弱さを出せる人に出会えてよかった」
「お父さん……お母さん……私、逃げるように家を出たのに」
「……むしろこちらこそ冴1人に抱えすぎた。本当にすまなかった。ずっと伝えたかったのに、帰ってこないから」
「そうよ。ずっと待ってたのよ」
お父さんとお母さんは待っててくれていて、しかも彩人が言ったように孤独に耐えることが、大人になることではないと分かってくれていた。
それだけで胸がいっぱいになって、私は泣いてしまった。
初めて、私という人間を認められた気がしたんだ。
でもそれは親と離れたからこそ、お互いに気付けたんだと思った。
挨拶が終わったらホテルに一泊してすぐに帰るつもりでいる。
「本当に、彩人の家に比べたら普通の家だから驚かないでよ」
「別にそんなの気にしてない」
「分かってるけど……あと弟たちがかなりうるさいと思うけど」
「それも察してるけど、弟4人ってのはなかなか想像できないな」
「まぁね。ほんと動物園みたいな家だから」
「ハハッ、じゃあ冴はレッサーパンダってとこだな」
「なにそれ」
「ペンギン」
「それもヤダ!」
彩人はライオンみたいって言おうと思ったけど、やめた。
もっとからかわれる気がしたから。
「もうすぐかな」
「うん、あとちょっと」
そして遂に我が実家へ着いてしまった。
何年ぶりだろう、少し震える指でインターフォンを押そうとすると、
「大丈夫だ、俺がいる」
と彩人が代わりに押してくれた。
玄関から早速懐かしい母の足音が聞こえる。
「はーい! あら、早かったわね〜お父さん〜冴達が来たわよ」
「初めまして、桐ヶ谷彩人と申します。本日はよろしくお願致します」
「桐ヶ谷さん、よろしくお願いします。母の花野萌(めぐみ)です。どうぞ中へ」
私は何も口にできず、玄関の中へと入る。
「さえねぇーちゃーん!!!」
リビングに行くと、弟たちのねえちゃんの大合唱が待っていた。
「はいはい、楓(かえで)たち静かにして。後でゆっくり話すから今はおねぇに話をさせて」
「……君が桐ヶ谷君か、よろしく」
「お父様、初めまして。こちら、名刺です。東京で桐ヶ谷産婦人科の院長をしております桐ヶ谷彩人と申します」
「あらお医者さんですって。すごいですねぇ」
「家親の七光りといいますか、継いだだけでして」
「……冴はどうなんだ」
「はい。彩人さんとは子宮筋腫ができて、病院にかかった時に出会いました。子宮筋腫の手術もして治療もしてくれました。だけど、私は彩人さんの医者としての素晴らしさだけでなく、人としての弱さを支えたいと思うようになりました」
「私も冴さんが図書館で司書として働く様子を見て、輝いてる部分には憧れ、弱さは守りたいと思うようになりました」
「色々あったのね。全然帰ってこないから心配してたのよ」
「冴もほかの子供も、いずれは自立せねばならないが、それは独りでやっていくこととイコールではない。冴がこんなにしっかりした桐ヶ谷さんという人としての弱さを出せる人に出会えてよかった」
「お父さん……お母さん……私、逃げるように家を出たのに」
「……むしろこちらこそ冴1人に抱えすぎた。本当にすまなかった。ずっと伝えたかったのに、帰ってこないから」
「そうよ。ずっと待ってたのよ」
お父さんとお母さんは待っててくれていて、しかも彩人が言ったように孤独に耐えることが、大人になることではないと分かってくれていた。
それだけで胸がいっぱいになって、私は泣いてしまった。
初めて、私という人間を認められた気がしたんだ。
でもそれは親と離れたからこそ、お互いに気付けたんだと思った。