いじわる主治医は、私にだけ甘い
「ゲホッゴホッ」

吐き気だけでなく、喘息の発作も出てきた。
彩人を振り切るために全力で走ったから。
最近調子良かったから、吸入器も持ってない。

私は観念して彩人に位置情報を送り、「喘息の吸入器も持ってきて欲しい」と書いた。「すぐ行く」と彩人の返事。

5分もしないで、車で彩人は現れた。

ベンチでぐったりしてる私に吸入を吸わせてから、

「ごめんな。無理させて」

と抱きしめてくれた。

「……そうだよ! 彩人……私は……もっと彩人と二人でしたいことあったから……」

「冴、ゆっくり呼吸しよ。分かったから」

涙が後から後からこぼれて、止まらなかった。

「だって彩人が……ヒック」

「すぐに内診しようなんて言って悪かった。冴の気持ちを考えてなかった。医者として、夫として嬉しくて舞い上がってしまった。ごめん」

「ううん……私もごめん」

「内診はゆっくりでいい。それに……内診はしなくちゃ分からないけれど、冴が耐えられないなら今回は妊娠継続は諦めてもいいと思ってる。冴の体と心が一番大事だから」

「うぇーん、でも、ちゃんと命なのに」

「冴っ」

彩人は抱きしめてくれたけど、私は振り払って嫌と言った。
彩人に出会ってから、初めて彩人を拒絶した。

「とにかく帰ろう、冴」

とぼとぼと歩いて、彩人の車に乗って帰った。
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